成熟儀礼

(続き)
多くの神話では「文化(智恵)の獲得」は同時に「死の発生」、「楽園喪失」でもあったと語られます。
合理的な理性や文化の獲得には、永遠性を喪失するという負の面があるわけです。
神話によっては、文化をもたらした英雄が、その後再度、「不死の獲得」に向けて旅立ちます。
成人後の成熟の儀礼の原型をここに見ることができます。

部族によって様々ですが、成人の後にも年齢に沿って何度も通過儀礼を行う部族もあります。
また、部族内の集団(結社)がたくさんの位階を持ち、位階を昇るごとに通過儀礼を行う部族もあります。
通過儀礼では、成熟するにつれてより深く潜在意識の智恵を獲得することが求められます。

成熟のプロセスは、心理的に言えば、心の内面に尽きることのない創造力を見出して、人格を成長させることです。
神話的には「若返りの水」「生命の木の実」の獲得などとしても語られます。

シャーマンの通過儀礼は、成熟の儀礼のモデルになります。
シャーマンは、天・地・地下の三界を探訪し、世界の構造を把握し、様々な霊的存在とのコミュニケーションの回路を作ります。
また、自分の体を骨にまで解体されることで、その構造を把握し、病気治療の知識を得ます。
どちらも自然や身体、潜在意識の諸力を、象徴的に認識してコントロールできるようになるための試練です。

少年少女を主人公にした童話には成人儀礼を元にしたものが多いのですが、老人を主人公にした昔話には成熟を示すものがあります。
昔話では、通常の生活上の判断を否定して利他的な行動をとると、意図せずして富を得るという形になります。
品物を売らずにあげる(笠地蔵)、動物を捕まえずに助ける(鶴の恩返し)などです。

「花咲爺さん」では、犬が何度も意地悪爺さんに殺されながらも、犬→木→臼→灰→桜とメタモルフォーゼを繰り返し、潜在意識や自然の持つ不死なる創造性をこれでもかと示します。
犬が経る死と再生の一回一回が、成熟に向けた通過儀礼のようにも思えます。

ジブリ作品だと、「風の谷のナウシカ」、「もののけ姫」、「ゲド戦記」、「ハウルの動く城」などは成熟の物語です。
いずれも、人間の利己的な行為によって、自然=無意識が創造性を失っている状態から物語が始まります。
特に「風の谷のナウシカ」は典型的で、自然=無意識を再生させる偉大なシャーマンになる話です。

(続く)

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